クールな騎士団長はママと赤ちゃんを一途に溺愛する
(屋敷を出ろって、離縁したいってこと?)

浮かんだ考えに血の気が下がりそうになったが、なんとか考え直す。

(いえ、そんなわけがない。だってこの結婚は国王陛下のご命令だもの)

個人的感情で関係を終了することは出来ないのだ。それほど王命は重く、リカルドはその事実をリアナより理解しているはずだ。

それにリカルドは“しばらくの間”と言っていた。

(離縁じゃないわ。でもそれならどうして私を追い出したいの?)

彼の考えが分からない。

「あ、あの、リカルド様。おっしゃる意味がよく分からないのですが……」

困惑しながら疑問を投げかける。

「リアナには子供が生まれるまでディエス公爵家で過ごして欲しいと考えている。勿論ダナも連れて行っていい」

「ディエス公爵家にですか?」

リアナは複雑な気持ちになった。

ディエス公爵家はリカルドの実家だ。

彼は次男で、成人した際に父公爵が幾つか持つ爵位のひとつであるベルグラーノ伯爵位を授かり名乗っている。

ディエス公爵家の屋敷は、ヴァレーゼ王国王都の貴族街の中でも最も王宮に近い一等地に建つ。

名門公爵家の権威を示すような広大な屋敷を、リアナは何度か訪れたことがあった。

しかし、絢爛豪華な屋敷にもそこに住む人々にも、長期滞在出来る程馴染んではいない。

リカルドの両親であるディエス公爵夫妻を始めとした婚家の家族は、リアナに対して少しよそよそしい。

意地悪をされたことはないが、親しみを向けてもらった覚えもなく、リカルドの妻として歓迎はされていないのだろうと気付いていた。

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