クールな騎士団長はママと赤ちゃんを一途に溺愛する
池のほとりに近付き、腰を下ろした。
澄んだ水面に自分の酷い顔が映っている。
(情けない顔だわ)
エルドラ王女の自信に溢れた姿を思い出した。
(私は足元にも及ばない)
自分が不甲斐なくて悲しくなる。
リカルドがリアナではなくエルドラ王女を好きになるのは当然と思えた。
臆病な自分。今になって嫌になる程実感している。
そして自覚した。
夫の恋を見守ろうと決意して家を出たつもりだったけれど、本当はただ逃げ出しただけなのだと。
リカルドに感謝している気持に偽りはない。彼に幸せになって欲しいと心から想っている。
だけど、本当は他の女性と幸せになって欲しくない。自分の側に居て欲しいのだ。
(私がリカルド様を幸せにしたい)
それなのに物分かりのいいふりをして、現実から逃げ出した。
相手が王族だから。侍女と約束をしたから。夫には数えきれない程の恩があるから。
そんなのは全て言い訳だと言うのに。
(私、リカルド様とぶつかるのが怖かっただけなんだ)
気持ちをぶつけても受け入れて貰える自信が無かった。リカルドはリアナではなくエルドラ王女を選ぶと分かっていたから。
だから自分が傷つく結果から、逃げ出した。