クールな騎士団長はママと赤ちゃんを一途に溺愛する
「王女様、追っ手がそこまで迫っています。もっと急がないと」

「分かってるけど無理よ!」

耳を塞ぎたくなる甲高い声が上がる。焦燥感は最高に達し泣き出したくなる。

(どうしよう……どうすればいいの? リカルド様助けて)

心の中で何度も彼の名前を呼ぶ。

必死で駆け館が視界に入り希望が見えた瞬間、エルドラ王女が激しく転倒した。

「きゃあ!」

地面は柔らかな土だが、それでも生まれてこの方転んだことなどない王女にとっては衝撃だったのだろう。

呻いたまま、リアナが助けようとしても起き上がることが出来ないでいた。

「エルドラ王女様、しっかりして下さい」

足音はもうそこまで迫っている。

なんとか起こそうとしたけれど、とうとう騎士たちに追いつかれてしまった。

リアナよりも頭一つ以上背の高く、鍛えられているのが分る屈強な体付きの騎士たちは眼光鋭く、道に座り込んだエルドラ王女とリアナを見下ろす。

その威圧的な雰囲気に恐怖を感じ、声が出て来ない。

不安に怯えていると身体に衝撃が走った。

「お、お前たちは何者なの? 私が誰か分かっていての狼藉なの?」

衝撃はエルドラ王女に抱き着かれたからだった。

それがきっかけでリアナの心身が動きだす。慌てて癇癪とも言えそうな王女の叫びを止めた。

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