クールな騎士団長はママと赤ちゃんを一途に溺愛する
「待って、落ち着いて下さい」

「こんな無礼者を前に落ち着いていられる訳がないでしょう!」

エルドラ王女の言う通り、王族に対して考えられない程の無礼者達だが、きっとこの場では常識は通用しない。

ヴァレーゼ王国騎士団の姿をしていても、彼らは間違いなく味方ではないのだから。

「今は耐えて下さい。あの人達を刺激したら危害を加えられるかもしれません」

エルドラ王女は目を見開く。この状況に至った今でも自分が傷つけられるとは思っていないのだろう。

王族に手を出す騎士がいると思っていないのだ。リアナは声を潜め告げた。

「彼らは我が国の者ではなく、敵かもしれません」

現在、ヴァレーゼ王国と敵対している国はたった一国しかない。

隣国、フォルレア。
証拠は無いが、二年前にヴァレーゼ王国王太子を狙い、結果としてリアナの父が命を落とした襲撃者たちの黒幕とみられている国だ。

しかし今も昔も大した国力はなく、ヴァレーゼ王国と戦っても勝ち目はないことから、戦に発展するまでは至らずかといって和解も進まない状況だった。

(フォルセア……お父様の敵……でも、彼らがエルドラ王女を狙う必要がある?)

次の王である王太子ならばともかく、危険を冒して第三王女を狙う理由が分からない。

しかも、もし本当にフォルセアの仕業だとしたら彼らはエルドラ王女の動向をずっと調べて機会を伺っていたことになる。

わざわざトリアにまで来て、自分達だって捕まる恐れがあるというのに……。

(一体何が目的なの?)

警戒を強めていると、騎士の一人が近づいて来た。

彼がリーダーなのだろうと察し、リアナはじっと動向を窺う。
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