クールな騎士団長はママと赤ちゃんを一途に溺愛する
「王女の手を離せ」

エルドラ王女へ向けていた口調に比べ乱暴だった。
リアナが逆らえばエルドラ王女とは違い直ぐに暴力で黙らされるのだろう。

「……離したらどうするのですか?」

「ただの娘には用はない。お前に選ばせてやろう。ここで王女を捨てて館には戻らずに消え口を閉ざすのならば見逃してやろう。騒ぎ立てるのなら口を塞ぐまで」

彼らはどうやらリアナをただの町娘と思っているようだった。

体調が悪く楽な簡素な服を着ていた事と、初め王女はひとりでいた状況から偶然居合わせたのだと考えているようだった。

返事に迷っていると、リアナの腕を掴む力が強くなった。

ふと視線を落とすと震えるエルドラ王女の手が有った。

強気な発言をしながらも強い恐怖を感じているのだろう。

(私だけ逃げるなんて出来ない)

それにこの状況を見聞きしているのに、本当に開放されるとは思えない。

結局どこかで、安心した瞬間に口を封じられるのではないだろうか。
< 98 / 117 >

この作品をシェア

pagetop