クールな騎士団長はママと赤ちゃんを一途に溺愛する
恐怖がこみ上げて来た。だけどこんな時こそ落ち着かなくては。

相手の言いなりになっても、明るい未来は無いだろう。

だったら勇気を出して、亡き父にも夫にも恥じないような行動をしよう。

そして、お腹の子とエルドラ王女と共に、リカルドのもとに戻るのだ。

覚悟を決めるとリアナはエルドラ王女の手を強引に放し、ゆっくりと立ち上がった。
騎士の顔に嘲笑が浮かぶ。

「賢いな。さっさと消えろ」

「そんな……裏切るの?」

騎士も王女もリアナが逃げると決めつけている口ぶりだった。ぐっと手に力を籠め、身体の内から力を奮い起こし口を開く。

「まさか」

思っていたよりしっかりとした声が出た。

「私はヴァレーゼ王国前騎士団長ユベル・トレドの娘。現騎士団長リカルド・ベルグラーノの妻です。我が国の王女が連れ去られるのを知りながら逃げ出す訳にはいきません」

騎士の顔が驚愕に変わる。しかしその顔は段々と歪み笑いに変わった。

「なるほど。これはついている。ベルグラーノの妻ならば人質として大きな価値があるからな。奥方にも王女と共にご同行願いましょう」

騎士はリアナも連れて行くと即断したようだった。

それが狙いだから構わない。リアナは心の中で安堵した。

< 99 / 117 >

この作品をシェア

pagetop