ロマンスの王子様
そんなことを思っていたら、
「賢志郎は、妻――母親に捨てられたんだ」

お父さんが言った。

「えっ…?」

何を言われたのか、全くと言っていいほどに理解ができなかった。

「お母さんに捨てられたって、どう言うことなんですか?」

そのことに驚いて思わず聞き返したら、
「何も聞かされていないのか?」

奥原さんも驚いたと言うように聞き返した。

「はい、特に…」

呟くように答えた私に、
「まあ、そうだろうな…」

奥原さんは返事をした。

「だけども、賢志郎のことは見捨てないでやって欲しい。

仕事が忙しいことを言い訳にして、妻の異変に気づくことができなかった僕のせいもあるから…」

お父さんは申し訳ないと言うように言った。
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