ロマンスの王子様
「妻にも、賢志郎にも、本当に申し訳ない…。

僕が気づかなかったせいで、賢志郎から母親を取りあげてしまった…。

賢志郎は、まだ１０歳だったのに…」

「お父さん、落ち着いてください…」

そう言った私だけど、何て声をかければいいのかわからなかった。

そうか…だから、結婚に興味がないなんて言ったんだ。

その言葉に隠された意味を私は理解した。

子供の頃にお母さんに捨てられたことがあったから、あんなことを言ったんだ。

お母さんに捨てられてつらかっただろう、寂しかっただろう…。

まだ幼かった彼の気持ちを考えただけなのに、胸がズキズキと痛んだ。

子供の頃の出来事から自分が結婚して家庭を持つ想像ができなかったのだろう。

もしかしたら、同じことをしてしまうんじゃないかと思ったのかも知れない。
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