ロマンスの王子様
「お、お姉ちゃん、落ち着いて…」

姉をなだめている私に、
「お母さんからもお願いするわ」

母が頭を下げてきた。

「お母さん、頭をあげて…」

私が5歳の頃に父を病気で亡くして、母は1人で『小町家』の女将をしながら私と姉を育ててきた。

母にも姉にも恩はある。

高校大学まで行かせてくれたのはもちろんのこと、その後の人生も好きなようにさせてくれた。

私がオタク生活を謳歌しているのは、母と姉のおかげだ。

「わかった」

そう返事をした私に、母は頭をあげた。

「私、奥原賢志郎さんと結婚する。

私が『奥原グループ』の総帥と結婚すれば、『小町家』は大丈夫なんだよね?

だから、結婚する」

そう言った私に、
「ありがとう、明穂!」

「あなたなら言ってくれると思ってた!」

母と姉は喜んだ。
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