ロマンスの王子様
待ちあわせ場所は、高級ホテル『エンペラーホテル』の中にある中華料理店だった。

「芳樹さん、久しぶりー」

先に席に座っていた芳樹さんに声をかけると、
「久しぶり…って言っても、1ヶ月前にも会ったじゃん」

芳樹さんは苦笑いをした。

「あっ、そっか」

私は返事をすると、芳樹さんの向かい側に腰を下ろした。

「結婚生活は大丈夫?

ちゃんと奥原さんとうまくやれてるかって、冬香とお母さんが心配してたよ」

そう言って食前酒を口に含んだ芳樹さんに、
「もう、お母さんとお姉ちゃんったらそればっかりなんだから。

私はこの通り、結婚生活を謳歌してるわよ」

私は言い返すと、メニュー表を手に持った。

「2人共、明穂ちゃんが心配で仕方がないんだよ。

『小町家』を助けるために、半ば強引に結婚しろって言ったから」

芳樹さんはふうっと息を吐いた。
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