ロマンスの王子様
8・かわいそうな過去
顔をあわせるのが嫌だから、食事やお風呂、トイレ以外はいつも自室にひきこもっていた。

奥原さんと特に話をすることもなかったし、何をするって言う訳でもなかった。

――私、奥原さんに恋してる

そのことに気づいた時、私は彼と一緒にいたいと思った。

でも気持ちに気づいたからと言って、何をするって言う訳じゃない。

リビングで一緒にテレビを見たり、必要なことがあったら少しの会話をするだけだ。

そんな小さなことだけど、私的には満足だった。

「明穂」

その日も一緒にテレビを見ていたら、奥原さんが声をかけてきた。

「何ですか?」

そう聞き返したら、
「今週末って、何か用事があるか?」

奥原さんが聞いてきた。

「特にはありませんけど…」

私が質問に答えたら、
「父親がくるんだ」

奥原さんが言った。
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