Match maker
第10話

始めの…第一歩

珍しく黙ったままの0に

私が説明した。

「正当な意味などないのかもしれないけど…気持ち的にというか…気持ちを伝えたり、確認したり…まぁ、そんな…なんて説明したらいいか分からないけど…いいもんです。」

…我ながら…何だろう下手過ぎる。

「なるほど。」

そう言って、彼は私の手に触れた。

そして、直ぐに離される。

早っ。繋いでない。触れただけ。

まぁ、私の脈拍は上がったけども。

それを0に突っ込まれずに済んでホッとした。

「なるほど。」

彼は、私の手に触れた自分の手をじっと見つめると

もう一度そう言った。

そして、今度は触れるだけでなく、私の手を…繋いだ。

親子のように。

私は、それを少し崩して、彼の指に自分の指を絡めた。

伝わるお互いの温度に恥ずかしいのに

離したくない。

何だか胸がこそばい。

風に揺らされる木々の音と、時々聞こえる川のせせらぎ。

暫くの沈黙後

彼が言った。

「僕の手から、情報が…そっちへ行きそうだ。」



「…そんな、USBケーブル的なアレではないです。」

「ふっ、そっか。僕の気持ちがあなたに流れ込んだらいいのに。」

「…え?」

「どれだけ流れてもいいくらい、増え続けている。」

じっと目を見て、そう言われる。

こっちの手からも…今の情報がそっちへ行きそうで…

「…えっと…」

目を逸らす。

な、何て返していいか分からなくて俯いた。

「なるほど、いいもんだね。」

そう言って、彼は手を離す。

離された私の左手が、まだ足りないとでもいうように

居場所を無くす。

まるで…

それは…

顔を上げ、彼の顔を見つめた。

私だけだろうか、足りないと、そう思ったのは。

< 56 / 187 >

この作品をシェア

pagetop