Match maker
彼は、私の手から離した右手をベンチの私の左肩辺りに置いた。

そして、彼の左手が私の左手に重なる。上から包むように、指を絡ませる。

その重ねられた大きな手を見るだけで、心臓がうるさくなった。

彼の手から、再び得た温もりに、ただ…

いいものだなと…思った。

「長くは…待てない。」

「え?」

顔を上げると随分と近い距離。

「それは、雅実が20代のうちに子供が欲しいと言ったからじゃない。」

…忘れてた。

そうだ、後がないって言われ・・・

近い、ち、近い、近い、近い!

【そうそう、手以外にも、さっさと色々繋いだらえーねん。USBもオスメスあるしぃ。】

ここでやっと0が入ってきた。

繋ぐ?

手以外も?

手…以外…って

田中さんが、恨めしそうに0を睨み

「邪魔、するなよ。」

そう言った。

【雅実の、理想のキスのシチュエーション“夕陽の沈む海辺”】

「ちょ!いつの話よ!それ、20歳くらいで、面白半分に登録しただけの情報だから!ちょっと!!!止めてよ!!」

真っ赤になって必死に否定した。

「ここから、まあ…ずっと漕げばいずれは海に出るけど?ちょうど、夕陽の沈むくらいになるかな。」

真面目くさった顔でそう言った田中さんに

「違うって!違う!もう、私も忘れて…」

「じゃあ、午前中の川辺で我慢して。」

手は…相変わらず触れたまま

それから、手以外にも。

繋げる場所は…

背中側にあった彼の右手が、私の髪に触れ、彼の方へと引き寄せられる。

軽く触れる唇からも

彼の気持ちが流れてくる気が…した。

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