好きになった子は陰陽師になった。-さくらの血契2-【一人称修正ver.】【完】
小路流は室町時代に一度、本家の後継者の相次ぐ急逝により滅亡しかけている。
そのとき、当時は本家よりは格下であった小路十二家から当主を迎え、なんとか繋いだと聞く。
影小路本家だけでなく、十二家から当主を選ぶしきたりはその頃かららしい。
家に興味はないけど、育った家である小埜家は十二家の一つなので、その辺りは知っていた。
黒藤が、その特異な生まれでありながら次代となることを決められているのは、強すぎる力を小路流が手放せないでいるから、ということか。
「黒藤の力が総て解放されてないってのは、どういう意味だ?」
「若君は御父君(ごふくん)の力を継いでおられる。が、その力はまだ眠っているんだ。若君の中にあるのか、散り散りになった無涯御大(おんたい)に残っているのか……そこまではわからないけど」
「………」
無涯。黒藤の父の名だ。
「……お前はよく知ってるなあ」
「兄貴が家にいない所為で俺が跡継ぎ任務を押し付けられたからね」
たまに嫌味を忘れないのも弟だった。