好きになった子は陰陽師になった。-さくらの血契2-【一人称修正ver.】【完】
「……黒は、過去世を信じるか?」
「否定はしねーが、憶えていたいもんでもねえな。俺は自分の記憶だけでも持て余してる。白は?」
「……記憶はない、が……」
「ん?」
「俺もなんとなく、なんだが……いつか思い出すんじゃないかって、気がしてる」
「………」
俺にあるのは、月御門白桜の意識と記憶だけだ。
だが、自分の知らない――『まだ知らない自分』は、この身体のどこかにいるのではないかという気がする。
これが陰陽師の勘なのか、人間としての感覚なのかは、陰陽師でない時間のなかった俺には判別がつきかねた。