好きになった子は陰陽師になった。-さくらの血契2-【一人称修正ver.】【完】
side黎
「真紅!」
真紅の住む影小路の家への道の途中で、その腕を掴まえることが出来た。
腕を引いた勢いで黎を見上げて来た真紅の両瞳は濡れていた。
「な、いてるのか……? お前、ほんとどうしたんだよ――」
「な、何でもないっ」
真紅が慌てて服の袖で目元拭う。
灯りが点いた街灯の下、こすれて紅くなるのが見えてその手を止めさせた。
両手首を握った格好で真紅を見下ろす。
「真紅、さっき澪に言ったこと聞こえたんだけど……梨実って、お前のなんなんだ?」
「………」
真紅は答えず、瞳を逸らした。
「……お前の男は、俺だよな?」
「……うん」
「じゃあ、真紅は?」
そう言葉を変えて問うと、真紅が勢いよく見上げて来た。
「黎の! です! ……ごめん、海雨のことはそういうのとは意味が違うって言うか……黎には、話しちゃいけないことなの」