好きになった子は陰陽師になった。-さくらの血契2-【一人称修正ver.】【完】
私は、確かに海雨に手を差し出した。受け止めたのも、私だ。
「黎」
傍らの黎を見上げて、手招きした。
「どうした?」
身を屈めた黎の首に腕を廻して、引き寄せるように抱き付いた。
「ごめん、こういうとき頼っちゃ駄目だって、わかってるんだけど……」
苦しい。心の奥が、重たい苦しみに包まれている。
「うぅ……っ」
痛みも苦しみも、全部一人、心の中に閉じ込めておかなければならない。
それはわかっている。だから昨日、黎には何も言わなかった。
「ごめん……っく」
涙が止まらない。知った真実は、私には大きすぎる闇だった。
「うん」
黎の腕が、そっと私の背中に廻った。
「何も言わなくていいから。泣きたいときは、せめてここにいてくれ」