好きになった子は陰陽師になった。-さくらの血契2-【一人称修正ver.】【完】
「真紅……ごめんな」
「え? なにが?」
「いや……せっかくだったのに、こんなことになって……」
「いやあ、なんか慣れて来た。こういういきなりなこと。……それでなんだけど、私、黎と付き合ってるって言っていいの、かな?」
弥生さんは、私を黎の彼女と断定して連れてきたようだ。
けど、私の立場上簡単に話していいことでもない。
黎の右手が、私の左手を包んだ。
「当り前」
「……うん」
どうやら、このだだっ広い屋敷に入るよりほかはないようだ。
ここは鬼人の拠点。……陰陽師見習いである私には少し注意が必要な場所だ。
えーと……私の周り、一ミリくらいかな? に、結界を張って……。桜城のおうちの空気を乱さないようにしなくちゃ。
霊力の波動がある程度強いらしい私は、近づいただけで滅してしまう妖異もあるそうだ。
鬼人の家の敷地内で、そして恋人の実家で、まさかそんなことをするわけにはいかない。
桜城一族は、妖異に寄ってはいなく、陰陽師の配下でもあるそうだけど。
私が何をしているのか、黎はわかっているようだ。黙って待ってくれた。
「誠! 美愛! 早く来てちょうだいっ」
弥生さんが先を行って、それに私と黎も続いた。