エリート外科医といいなり婚前同居
夢の中の出来事……そう思ってくれていいから、やっぱり伝えさせてくれ。
俺はシーツに突いていた手を彼女の頬に添え、視線にありったけ愛情をこめながら、素直な気持ちを口にした。
「好きだよ、千波」
千波の目が見開かれ、半分夢から醒めたような顔で、俺を見つめ返す。
「えっ……?」
でも、今はまだ夢にしておこう。きみが俺を思い出してくれるその日を、待ちたいから。きみと遠い昔に交わした約束を……今でも有効だと信じたいから。
「きみのことが好きだ」
俺は再度告白すると、千波に何も聞き返されないように、彼女の唇をキスでふさいだ。
アルコールのせいかいつもより唇の温度が高く、かすかに残るワインの風味にこちらまで酔わされ、何度も彼女の唇を求めてしまう。
「ん、んぅ……礼央、さ……」
上擦った千波の声は色っぽく、苦し気に寄せられた眉も、煽情的だ。
そして、ここは自分の部屋のベッドの上。
段々と理性が本能に負けそうになるのを感じ、自制しなければと思いつつ、なかなか体が言うことを聞かない。
濡れた唇の隙間から舌を割り入れ、彼女の甘い唾液を絡め取っては、それを啜った。まるで血を啜らなければ生きていけない、吸血鬼のように。
……しかし、これ以上先に進めば、夢では済まされない。きみの気持ちを知らぬまま、強引にすべてを奪うわけにはいかない。
なんとか冷静さを取り戻した俺は、最後にチュッと唇同士をを押し付けると、千波の体の上から退いた。