エリート外科医といいなり婚前同居
「おめでとう。どんな人?」
「化粧品メーカーの社長。まぁちょっとしたきっかけで話すようになったんだけど、私の微生物マニアっぷりに引かず、面白がってくれる人で」
「しゃ、社長! じゃあ、かなりの年上?」
想像力に乏しい私は、重役と言えば恰幅の好いおじさんか、お爺さんくらいの年齢の人かと勝手に見当をつけ、雅子に尋ねる。
「ううん、三十代前半。だから、千波の彼と同じくらいじゃない?」
礼央さんは別に私の彼ではないけど、特に突っ込むところでもないかと頷いておく。
「その人も、告白するより先にキスしてきてさ。最初はなにするのよ!って反発してたけど、いつの間にか好きになっちゃってたんだよね」
「いつの間にか……か。ねえ、好きになるってどんな感じ?」
恋愛経験が一度もない私には、その感覚がイマイチわからないのだ。
「んー……近くにいるとドキドキして、離れてると切なくて胸がぎゅっとして。デートしたばかりなのに、家に帰ってもう〝会いたい〟って思ったり……それと」
そこで言葉を切った雅子は、声のボリュームを下げて本音を吐露する。
「欲しくなる。彼の全部。……心もだけど、体も」
その赤裸々すぎる発言に、当事者でもないのに顔がかぁっと熱くなった。