エリート外科医といいなり婚前同居
礼央さんの気持ちを探るように上目遣いで見上げると、悪戯っぽい微笑を浮かべた彼にこう言われた。
「まだ秘密。頑張って思い出して?」
そ、そんなぁ……。もったいぶらないで教えてくれればいいのに。
煮え切らない思いを抱えてモヤモヤする私にクスッと笑みをこぼしてから、礼央さんはさっさとキッチンを出て行ってしまった。
こうなったら自分で思い出すしかない。
でも、私と彼の年の差を考えたら、出会ったのはきっと幼児か、早くて乳児の頃……。って、そんな赤ちゃんの頃の記憶があるわけない。
じゃあ、三歳から五歳の間くらい……?
うーんと唸りながら記憶の扉をあちこち開けるけれど、それらしい思い出には行きあたらず、全くのお手上げだった。
考えるのもいいけど、とりあえず夕飯作らないと……。
私は一旦思考を切り替えて、ご飯の準備に取り掛かるのだった。