エリート外科医といいなり婚前同居
「千波、おやすみのキス」
「あの、礼央さん、今日……」
そして迎えた、クリスマスパーティーの前日。
いつものように寝る前のキスをねだる彼に、私は意を決して告げた。
「今日……礼央さんのベッドで、一緒に寝ちゃダメですか?」
礼央さんは信じられないという風に目を見張り、それから少し考えてこう尋ねてきた。
「千波……それ、どういう意味で言ってる?」
厳しい目つきの彼に、表情を覗かれる。
偽物のくせに抱いてくれなんて、過ぎたことを言い出したと思われているのだろうか。
でも、そういう意味じゃない。私はただ明日でこの役目も最後だと思うと、少しでも彼のそばにいたいって気持ちが強くなっただけなのだ。
ひとつ屋根の下にいるのに、壁一枚を隔てて別の部屋にいるという状況が、切なくて……。
「もちろん、変な意味ではありません。ただ……明日、うまく婚約者を演じるために、今夜はあなたのそばで眠りたいって思っただけなんです」
強引な理屈をこねて頼み込むと、礼央さんは自分のウエーブがかった黒髪にくしゃりと手を差し込み、眉根を寄せて考え込んでしまう。
寝る時まで一緒なんて、面倒だと思われちゃったかな……。