エリート外科医といいなり婚前同居
礼央さん……? なんで、抱きしめたりなんか……?
状況が飲み込めないながらも、私の胸は懲りずに高鳴りだす。
自惚れたらダメ……。ダメなんだってば。自分にそう言い聞かせていると、彼の唇が耳に触れそうな距離で囁く。
「……振り向かないで。顔見たら、襲いたくなる」
どこか切羽詰まったような声色に、ドキン!と大きく鼓動が波打った。
襲いたくなる……って。礼央さんが、私を……?
「じょ、冗談……ですよね?」
「千波は、冗談であってほしい?」
質問を質問で返されると困ってしまう。でも、正直な気持ちを言うなら……。
「……自分でも、わかりません」
私は頼りない声で呟いた。
だって本当にわからないんだもの。冗談だったらホッとするけど、きっと少し寂しい。その反面、冗談じゃなかったとしたら、未知の体験過ぎてきっとパニックだ。
「わからない?」
「はい……どちらにしろ困る、ってところでしょうか」
曖昧な言い方でごまかすと、礼央さんがため息交じりに呟く。
「……ごめん、困らせて」
「いえ……私の方こそすみません。そういう経験なさすぎて、幼くて……」