エリート外科医といいなり婚前同居
私がもっと大人の女性だったなら、冗談であろうとなかろうと、気の利いたセリフで対応できるのだろうし、礼央さんを謝らせることなんてなかったのに……自分の無知さに嫌気がさす。
「幼くなんてない。千波は魅力的な女性だよ。そうじゃなきゃ婚約者のフリだって頼まない。千波だから、頼んだんだ」
「礼央さん……」
優しい言葉に、胸がトクンと鳴る。馬鹿な私はまたしても、あり得ない未来を望んでしまう。
もしも礼央さんの特別な人になれたら、どんなに幸せだろうって……。
「そろそろ寝よう。明日は大事なパーティーだから」
「はい。おやすみなさい、礼央さん」
「おやすみ」
本当は眠くなんてないけれど、彼の言う通り明日はとうとうほかの人の前でも、礼央さんの婚約者として振舞う責任重大な一日。
目の下にクマをつけるわけにはいかないし、無理やりにでも眠らなきゃ。
そうして目を閉じたものの、礼央さんに抱きしめられたままの状態ではなかなか落ち着けず、火照った体と心を必死でなだめながら、なんとか眠りにつくのだった。