エリート外科医といいなり婚前同居

私がもっと大人の女性だったなら、冗談であろうとなかろうと、気の利いたセリフで対応できるのだろうし、礼央さんを謝らせることなんてなかったのに……自分の無知さに嫌気がさす。

「幼くなんてない。千波は魅力的な女性だよ。そうじゃなきゃ婚約者のフリだって頼まない。千波だから、頼んだんだ」

「礼央さん……」

優しい言葉に、胸がトクンと鳴る。馬鹿な私はまたしても、あり得ない未来を望んでしまう。

もしも礼央さんの特別な人になれたら、どんなに幸せだろうって……。

「そろそろ寝よう。明日は大事なパーティーだから」

「はい。おやすみなさい、礼央さん」

「おやすみ」

本当は眠くなんてないけれど、彼の言う通り明日はとうとうほかの人の前でも、礼央さんの婚約者として振舞う責任重大な一日。

目の下にクマをつけるわけにはいかないし、無理やりにでも眠らなきゃ。

そうして目を閉じたものの、礼央さんに抱きしめられたままの状態ではなかなか落ち着けず、火照った体と心を必死でなだめながら、なんとか眠りにつくのだった。



< 126 / 233 >

この作品をシェア

pagetop