エリート外科医といいなり婚前同居

「着いたよ」

「わ、すごい豪邸……」

目的地に到着すると、他にも何台か車が停まっている広い庭に駐車して、車を降りる。

そこに佇むのは、ヨーロピアン調の真っ白な外壁の住宅。窓枠や屋根の形もおしゃれで、家というより流行りのレストランのようだ。

「千波」

大きな玄関に向かって歩き出そうとしたら、隣に並んだ礼央さんが私を見下ろして微笑む。

「腕につかまって。その方が婚約者らしく見える」

「は、はい……」

そうだった……。ドライブの雰囲気に浮かれて忘れかけてたけれど、これから私、たくさんの人の前で礼央さんの婚約者として振舞わなきゃならないんだった。

遠慮がちに腕をつかませてもらうと、礼央さんがふっと息を漏らして笑う。

「その程度じゃまだ婚約者とは言えないな。もっと体寄せて」

「えっ。これ以上ですか……?」

「当たり前だろ。俺は今日、パーティーの主催者であるこの家の主人、かつ医師としての大先輩でもある方の娘さんとの縁談を断って、ここにいるんだ。もし千波が偽物の婚約者だとばれたら、どうなると思う?」

……そりゃあ、だいぶマズイ事態になるだろう。

娘さん本人、そして親である先輩医師の気持ちを両方踏みにじっているわけだし、嘘をついたことで信用も失う。パーティーの雰囲気は台無しだ。

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