エリート外科医といいなり婚前同居
彼がそんなことを気にしていたとは思わなかったので、私は彼をじっと見つめながらこう言った。
「私は……礼央さんさえ隣にいてくれれば、楽しいですよ?」
好きです、とは言えないから、今の私の精一杯の本心を伝える。
慣れないパーティーに緊張はしているけれど、ここに来るまでのドライブの間も、こうして一緒にお酒を飲んでいる時間も。礼央さんと一緒にいられる幸せを、痛いくらいに噛みしめているのだから。
「千波……」
礼央さんも私を見つめ返し、その瞳が熱をはらんで少し潤みだした時だった。
「暁先生」
背後から女性の声が礼央さんを呼び、私たちは二人で振り返る。
そこにいたのは、ネイビーのロングドレスに身を包んだ、色白で華奢な若い女性。背中までまっすぐ伸びた黒髪ロングヘアがとても似合っている。
儚げできれいな人だな……。
ぼんやり見惚れていたら、彼女が立ち尽くす私たちにゆっくり近づいてきて、自己紹介した。
「初めまして。田所の娘の美乃梨です。この度は、父がご無理なお願いを申し上げたようで、すみませんでした」
「ああ、先生の娘さんでしたか。初めまして、暁です。そしてこちらが婚約者の千波です」
「は、はじめまして……!」