エリート外科医といいなり婚前同居
周囲のゲストたちから拍手が沸き起こり、照れくさそうに頭をかく礼央さんが、不意に私の姿を見つける。
その瞬間彼が浮かべた柔らかな笑顔に、私の胸にもまるでダーツの矢が刺さったような、甘く切ない痛みが走った。
こんなに好きになっちゃったんだもん。もう、戻れないよ……。
ジンジンと疼く胸の痛みを堪えつつ、私も彼に向かって微笑みを返した。
パーティーは二十時頃お開きになり、二次会へ向かう人たち以外は解散することになった。
私たちは田所さんと美乃梨さんに挨拶を済ませ、駐車場で車に乗り込む。そしてエンジンをかけて走り出したところで、礼央さんが私に問いかけた。
「少し寄り道していい?」
「寄り道? はい、構いませんけど」
まっすぐ家に帰るのではないとわかって、私はこっそり胸を弾ませた。
まだ私、家政婦に戻らなくていいんだ……。
魔法使いに口酸っぱく注意されていたのに、王子様との踊りに夢中で時間を忘れたシンデレラの気持ちがよくわかる気がした。
できることなら、いつまでも魔法が解けなければいいのに……。
車窓から見える美しい冬の夜空に、そう祈らずにはいられない。
礼央さんは元気のない私に気づいているのかいないのか、特に話しかけてくることなく運転に集中していた。