エリート外科医といいなり婚前同居

「きれい……」

礼央さんが、これを私のために……?

きゅうっと胸が締め付けられ、思わず瞳が潤んでしまう。

そんな私を静かに見つめていた礼央さんが、不意に問いかけてきた。

「ねえ千波。美乃梨さんと、なにを話したの?」

なんの脈絡もなく飛び出したその名前に、胸がどくんと嫌な音を立てた。

私はごまかすように軽く微笑んで、「え?」と短く聞き返す。

「パーティーの間は、会場に美乃梨さんもいたから聞きづらかったけど……千波の様子がおかしかったから、ずっと気になってたんだ」

どうしよう……。本当のことを言うべき? でも、どこまで?

礼央さんの同僚の女性が彼を想っていることまでは、どうしても言いたくない……。

ネックレスを手にしたまま沈黙する私に、礼央さんがそっと尋ねる。

「もしかして……俺たちのこと気づかれた、とか?」

ぎくりとして、小さく体が震えた。

そして少し迷ったのち、この察しのいい彼を私なんかが欺けるはずがないと観念する。

でも、細かいところは省いていいよね……?

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