エリート外科医といいなり婚前同居
私は頭の中で美乃梨さんとの会話を整理し、礼央さんに話せる部分だけをかいつまんで伝える。
「婚約指輪をしていないから、もしかしてって疑いを持ったそうです。私も、うまくごまかせなくて……すみません。でも、お父様には言わないでいてくださると言ってくださったので、大丈夫です」
そう言い切ってから、運転席の礼央さんににっこり微笑みかけた。……つもりだったのだけれど。
「じゃあ、どうしてそんなに悲しそうに笑うの?」
真剣な眼差しで問いかけられ、私の胸がどくんと揺れる。
悲しそうになんてしてません。礼央さんの勘違いじゃないですか?
そう否定したいのに、彼の澄んだ瞳にすべてを見透かされている気がして、言葉は声にならなかった。
しばらく沈黙が続いた後、礼央さんは私から話を聞き出すのを諦めたように、話の矛先を変えた。
「ねえ千波。ネックレス、着けてあげるから貸して?」
彼の手にネックレスを渡すと、シートベルトを外した彼が、私の首の後ろに手を回す。
接近した彼の香りに心臓は否応なくドキドキして、ただじっとネックレスが装着されるのを待った。