エリート外科医といいなり婚前同居
幸い、観覧車はロマンチックな時を過ごしたい恋人たちで混雑していて、すぐには乗れそうになかった。
よかった……心の準備もままならないうちに、いきなり密室に押し込まれなくて。
列の最後尾についたところで、彼に聞こえないようほっと息をつく。
「千波は、こういう行列に並ぶの平気な方?」
「そうですね……。飲食店とかはあまりに混んでいるとうんざりしちゃいますけど、こういうのなら大丈夫です。礼央さんは?」
「俺もあまり得意な方じゃないけど、デートなら別かな。隣に千波がいてくれるだけで、待ってる時間すら楽しいから」
「礼央さん……」
甘い言葉とともに繋いでいた手を強く握り直されて、胸がきゅんと音を立てる。
礼央さん、あなたはどれだけ私を有頂天にさせれば気が済むの……?
私、本当に勘違いしちゃうよ。自分が家政婦だってこと忘れて、どんどん欲張りになっちゃうよ……。
「次のお客様どうぞ」
やがてゴンドラに案内されると、私たちは向かい合って座り静かに外の景色を眺めた。地上の光は次第に遠ざかり、夜空に瞬く星たちにゆっくり近づいていく。