エリート外科医といいなり婚前同居

本当のことは言えない。でも、これ以上礼央さんをごまかし続ける自信もない。どうしたらいいのかわからなくて膝の上でぎゅっとこぶしを握ったその時だった。

がくん、とゴンドラが一度大きく揺れ、その後空中で動かなくなってしまった。

「え……?」

嘘。なんで急に止まったの?

「停電……じゃないよな。明かりはついてるし」

礼央さんも突然のことに驚いた様子で、窓から外の様子を眺めている。

そのうち、ゴンドラ内のスピーカーから無線が流れ出した。

『ただいま、観覧車の緊急停止装置が作動しました。確認作業が済み次第運行を再開しますので、しばらくお待ちください』

淡々とした遊園地スタッフの声に少しホッとしたけれど、周囲の景色をよく見てみれば私たちのゴンドラがいるのは観覧車の頂上付近。地上から最も遠い場所に閉じ込められていることに、不安が残る。

「し、しばらくって……どれくらいでしょう」

「どうだろうな。なにも問題なければ数分だろうけど」

私たちは静かに成り行きを見守っていたけれど、十分ほど経過してもゴンドラは依然として動かないままだった。



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