エリート外科医といいなり婚前同居
「お医者さんごっこ、しようか」
クリスマスから少し経って、年末の慌ただしさもピークに差し掛かってきた頃。
大学は冬休みに入っているけれど、どうしても礼央さんとのことを報告したくて、雅子をランチに誘った。
「えっ。まだ寝てないの?」
「まだって……そんな、付き合いはじめてまだ数日だよ?」
目の前で、雅子が理解不能だと言う顔で首をひねっている。
今日訪れているのはいつもの大学近くのカフェではなく、オフィス街にあるお洒落なイタリアンレストラン。どうやら夕方から例の彼氏と約束があるらしく、彼の会社近くの店がいいと雅子にリクエストされた。
おすすめの自家製生パスタはモチモチで、ソースの味も抜群。この辺りのОLさんは毎日こんな美味しいランチを食べているのかと羨ましくなる。
そんな私の呑気な思いとは裏腹に、雅子はどこか不服そうだ。
「でも一緒に住んでるんだよね? 男の人なら絶対我慢できない状況だと思うんだけど」
「……紳士なんだよ礼央さんは。基本的にそんなにがっついた感じないもん」
雅子の彼氏は肉食系のようだけど、礼央さんがそうじゃないってだけだ。
そういう行為の気配はないものの、クリスマス以降も優しいハグやキスのスキンシップは続いているし、愛情はちゃんと感じる。
体を求めてこないのは、恋愛経験の乏しい私に無理強いはしたくないという礼央さんなりの優しさだろう。