エリート外科医といいなり婚前同居

「千波がいいならいいけど……付き合いたてでがっつかれなかったら、私ならちょっと危機感持っちゃうかも」

「危機感って?」

「この人本当に私のこと好きなのかなとか、他に女いるんじゃないかなとか」

まさか……。礼央さんに限って、それはない。というか、雅子はどうしてそんな私を不安にさせるようなことばかり言うのだろう。 

雅子の言い分に納得がいかなくて、私はついぼそりと言い返した。

「そんなに体のことばかり考えてる雅子の方が変だよ」

雅子がもともと大きな目をさらに見開き、それから気まずそうに苦笑した。

「……そう、かもね。ごめん、私の相手が節操ないだけなのかも」

あ……。私、もしかしたらひどいこと言った? 彼女の傷ついたような笑みに、ツキンと胸が痛む。

「ううん。私も、ごめん……ちょっと、言い過ぎた」

それきりテーブルに沈黙が落ち、居たたまれない空気が流れる。雅子は大学で唯一の友人なんだから、こんなことでぎくしゃくするの嫌なのに……。

「雅子」

その時、私たちのテーブルのそばで、男性の透き通った低い声がした。

そこに立っていたスーツ姿の人物の顔を見るなり、雅子の頬がばら色に染まる。

この反応は、もしかして例の彼氏さん? 私は興味津々で声の主を見上げた。

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