エリート外科医といいなり婚前同居

店を去る聖人さんの背中を見送る雅子の瞳はどこか熱っぽく、涙の膜が張って潤んでいる。

それは恋する乙女というより、どうしようもなくひとりの男性に焦がれる大人の女性のものだ。

思えば聖人さんもそうだった。雅子を見つめる優しい瞳の奥には、大人の男性ならではの、本能的な色が浮かんでいた。

じゃあ、礼央さんが私を見つめる時はどう……? 思い出したいのに、うまく思い出せない。

そうでなかったらと思うと怖くて、無意識に思い出さないようにしているのかもしれない。

「……やっぱり、雅子の言う通りかもしれない」

ぽつりと呟いた私に、雅子が首を傾げる。

「ん? どうしたの急に」

礼央さんが私を求めてこないのは、本当にただの気遣い? それとも私にそこまでの感情がない? ……一度疑い始めたら、止まらなかった。

「私……もっと危機感を持った方がいいのかも」

雅子にも聞こえないような小声で、ぽつりと呟く。

本気で恋しているふたりは、たとえ昼間のレストランでも、隠しきれない甘い感情を抱いて見つめ合う。雅子たちを見ていて、それがよくわかった。

私と礼央さんは、どんなふうにお互いを見てる? 礼央さんの瞳の中に、本気で私を欲しがる感情はちゃんと存在してる……?

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