エリート外科医といいなり婚前同居
「ごめん、ぼうっとして。お腹空いたね。準備して食べようか、おでん」
「はい。僕も手伝います。なにをすればいいですか?」
「えっとね……じゃあテーブルを拭いてお箸を並べてもらおうかな」
拓斗くんに指示を出しながらも、無性に心に引っかかった。
もしかしたら私は、すごく大切なことを忘れているんじゃないだろうか。
聴診器のおもちゃ、お医者さんごっこ、独りぼっちの寂しさ。
もう少しヒントがあれば、思い出せそうな気がするのに――。
夕食を済ませた後、私は和室の収納をひっくり返して自分のアルバムを探していた。
アルバムの中に、運よく礼央さんと私の接点が分かるような写真がないかと思ったからだ。
そのやかましい物音を怪訝に思ったのか、リビングでくつろいでいたはずの拓斗くんも和室に入ってくる。
「千波さん、なにしてるんですか?」
「昔の写真を探してるの。私がちっちゃい頃の。確かこの部屋にしまってあったと思うんだけど……」
「なるほど、僕も手伝います。千波さんの小さい頃の姿見てみたいし。可愛いんだろうなー」