エリート外科医といいなり婚前同居

「イギリスか……なかなか遠いなぁ」

「両親にも〝日本に残って一人暮らしさせてくれ〟って頼んでみましたけど、まだ中学生だから心配だと言われてしまって……」

千波とのお医者さんごっこを続けることおよそ一年。

父親の仕事の都合で、家族そろってイギリスに渡らなくてはならなくなった。

それを紺野先生に報告すると、彼は寂しそうにしながら「千波には俺から話しておくよ」と言ってくれた。

それから自分のメールアドレスをメモに書き、日本に帰ってくるときには連絡してほしいと俺に渡した。

俺のイギリス行きを知った千波はどんな反応を示したのだろう。

彼女のことが常に心に引っかかってはいたが、あのいたいけな少女に泣かれてしまうかもと思うと顔を合わせる勇気がなかったし、引っ越しの準備も忙しく、それから紺野先生の病院を訪れる機会はなかった。

そして、とうとう出発の日が訪れて――。