エリート外科医といいなり婚前同居
「結婚しよう、千波」

「ん……」

あたたかなベッドの中で、私は目を覚ました。

頭が痛くてぼうっとする。ここ、どこだろう。見たことある天井だけど……。

ゆっくり目を瞬かせて、自分の置かれた状況を思い出す。

確か私、礼央さんに会いに来て……でも彼は不在で、ときどき電話をかけてみても出てもらえなくて。仕事かなと思いながら、すっかり暗くなった頃にようやく電話がつながって……。

『千波!』

愛しいあの人がそばまできて、私の名を呼んでくれた気がする。

でも私、そのまま意識が遠くなっちゃったんだよね……。ということは、ここは礼央さんの部屋……?

ぼうっとしたままの頭でそんなことを考えていたら、ふと鼻腔をくすぐる美味しそうな香りに気が付く。

いい匂い……ご飯のおこげみたいな、香ばしい感じ。

すんすんとその香りを嗅いでいたら、次第に香ばしさが焦げ臭さに変わり、なんだか心配になってくるとともに、意識もハッキリしてきた。

ここはやっぱり礼央さんの部屋だ。ということは、キッチンに立っているのは彼しかいない。

でも、彼は全くと言っていいほど家事ができなかったはずなのに……いったいなにを作っているの?



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