エリート外科医といいなり婚前同居
居てもたってもいられなくなり、フラフラとした足取りでリビングダイニングへ移動する。
ドアを開けると焦げ臭さはいっそう強くなり、やっぱり彼がなにか作ってるんだ……と、おそるおそるキッチンを覗いてみる。
するとコンロの火はすでに消えていたものの、もはや作っていたのがなんだったのかわからないほど丸焦げになった片手鍋を前に、礼央さんが難しい顔で腕組みをしていた。
「……あの。大丈夫、ですか?」
遠慮がちに声をかけると、我に返った礼央さんがこちらを向く。
「千波。まだ寝てないとダメだろ」
「は、はい、すみません……。でも、寝室まで焦げ臭い匂いが漂ってきていたので心配になってしまって」
そう説明すると、礼央さんはすまなそうに目を伏せる。
「……そうか、ごめん。俺は本当に料理の才能がないらしい。お粥って、ご飯を加熱すればいいだけじゃなかったんだな」
「そ、それはダメです……! お水も足さないと」
私の指摘に、礼央さんはシンクに手を突きがっくりうなだれた。