エリート外科医といいなり婚前同居
なんとか年内に風邪を治した私は、大みそかの夜も張り切ってキッチンに立っていた。
漆塗りの重箱に詰めるのは、手作りのおせち。自分で白身魚をすり身にして卵と一緒にふわふわに焼き上げた伊達巻きは、特に自信作だ。
明日の夕方、礼央さんとともにこれを持って実家を訪問し、温泉から帰ってくる父たちと一緒に新年のお祝いをする予定なのだ。
「ただいま」
「あっ、おかえりなさーい」
礼央さんが帰ってきた声がしたので、一旦手を止めて玄関に向かう。
彼は今日が仕事納めだったせいか、出迎えた私に向ける笑顔はいつもより晴れやかだった。
「今日で今年のおつとめは終わりですね。お疲れさまでした」
「ありがとう。呼び出しがなければ、だけどな」
「気になる患者さんが?」
「いや、今は比較的容体が安定している人が多いから大丈夫だと思う」
廊下を歩きながらそんな会話をし、リビングダイニングに入るとスーツのジャケットとネクタイを外した彼がキッチンを覗く。
「お、すごい。本格的なおせちだ」
「ちょっと気合い入れちゃいました。来年は父が再婚するし、お祝いムードを出したいなって」