エリート外科医といいなり婚前同居
父も白石さんも二度目の結婚ということで式を挙げるつもりはないらしいけれど、そのぶん家族では盛大にお祝いできたらいいなと思っている。
ただ、実は今拓斗くんとちょっと気まずい状態なんだよね……。明日顔を合わせた時に、少し話ができるといいな。
そんなことを思いながらおせちを詰める作業を再開していると、いつの間にか背後に回っていた礼央さんにぎゅっと抱きしめられる。
前のように動揺することはもうないけれど、照れくささは変わらない。
絶対に赤くなっているであろう顔はあまり見られたくないなと内心思っていると、礼央さんが甘えるように私の肩に顎を乗せた。それから耳のすぐ近くにある彼の唇が、静かに囁く。
「祝い事、もうひとつ増やしていい?」
「お祝い……なんのですか? 礼央さん、病院で出世なさるとか?」
そう聞いてみると、ふっと笑った彼の鼻息が首筋にかかる。
「まぁそれも近いうちにあるらしいからあながち間違いでもないけど……俺が今言ってるのは、全然別のこと」
「別……。なんだろう。あ、もしかして礼央さんお誕生日が近いとか――」
そう言いかけた瞬間左手を掴まれて、薬指にスッと固いものが嵌められる感触がした。