エリート外科医といいなり婚前同居
「え?」
これって……まさか……。
パッと下を向いて自分の左手を見ると、センターストーンに大粒のダイヤが輝く、やわらかなフォルムのプラチナリングが。
突然のことに言葉を失い呆然としていると、礼央さんは私の肩を掴んで優しく振り向かせ、両手を取って包み込むようにそっと握った。
そして、誓いを述べるようにゆっくり、言葉を紡ぐ。
「結婚しよう、千波」
突然のプロポーズに驚き、私はとっさに言葉が出なかった。けれど徐々にこれ以上ないほどの幸福感が胸に押し寄せて、目の端にじわりと涙が浮かぶ。
「礼央さん……本当に? これ、夢じゃないですか?」
頼りない声で尋ねると、礼央さんは穏やかな笑みで私に言い聞かせる。
「夢じゃないよ。だって約束しただろ? あの日、別れ際に空港で」
礼央さんの言葉で、再び脳裏に蘇る懐かしいシーン。
彼との別れが辛すぎた私は、今度再会した時には絶対に離れられないように、結婚しちゃえばいいんだ!と単純に思って。
お気に入りのおもちゃの中から聴診器を渡して、彼に逆プロポーズのようなことをしたんだよね。……なんてませた子どもだったんだろう。