エリート外科医といいなり婚前同居
「こんにちは拓斗くん。家にいたんだね」
「そりゃいますよ。デートしたいと思ってた相手に振られたばかりですから」
「あー……ええと、その節は……」
仏頂面の拓斗くんが放った嫌みっぽいセリフに、思わず口ごもってしまう。
実は礼央さんのマンションを飛び出した翌日、拓斗くんは気晴らしに出かけないかと誘ってくれたのだけれど、私は断ってしまった。
アルバムを見てから礼央さんとの過去の繋がりを思い出し、彼の本当の想いを知りたくていてもたってもいられなかったから、彼のマンションに戻ると言ったのだ。
その時――。
『俺、千波さんのお母さんの亡くなった原因が自分にあると知ってから、ずっとあなたに対して責任を取らなきゃいけないんだって思ってた。千波さんが小さいころ寂しい思いをしたのは俺のせいだって……だから、大人になったら俺があなたを守るって決めてた』
『拓斗くん……』
『でも今は、そんな義務感なんかじゃなく、あなたを行かせたくない。好きなんです、千波さんのことが。お願いですから、ここにいてください』
そう一生懸命に告白され、拓斗くんの想いは伝わってきたのだけれど……私は彼の気持ちに応えることができなかった。