エリート外科医といいなり婚前同居
こうして実家があって、父も現役で稼いでいるわけだから、野垂れ死ぬってことはないだろうけど……できることなら早く自立したい。
昔から父の病院に通う、なじみの患者さんたちにも「千波ちゃんまだ実家にいるのね」とか言われてしまいそうだし……。
「んー……仕事ねえ。職種にこだわりがないなら、紹介してやらんでもないが」
口ひげを弄りながらぼんやり呟いた父に、私は思わず身を乗り出す。
「えっ。お父さん、本当?」
「……いや、お前が期待するような医療関係の仕事じゃないぞ? まぁ、世話をする相手は医者だが」
お医者さまの、お世話? なにその特殊すぎる職業。
キョトンと目を丸くする私に、父がゆっくり説明を始める。
「ずっと海外暮らしだった知り合いの医者が、日本に帰って来たんだが……どうも自分の世話ができない男でな。いい家政婦がいないか探してるらしい」
「家政婦……」
思ってもみない分野だった。でも、そのお医者様のために家事をしてあげればいいだけなら、特殊なスキルが必要というわけでもない。
家事は昔から父と分担してきたから得意だし……私にもできる仕事かも。