エリート外科医といいなり婚前同居

「暁さん、起きないと病院に遅れますよ」

仕方がないので再度声をかけつつ、暁さんの体をぽんぽんと軽く叩く。小さく身じろぎした彼は薄っすらとまぶたを開け、ゆっくり瞬きしながら私の姿を確認した。

よかった、思ったより早く目を覚ましてくれた。

「おはようございます、暁さん」

「ん……おはよ」

のんびりした掠れ声で言って、まだ半分寝ぼけているように薄く目を開けた彼は妙に色っぽい。

別に同じベッドで一夜を共にしたとかそういう訳じゃないのに、暁さんのプライベートな表情を垣間見てしまったのが恥ずかしくて、私は彼から視線を外した。

「わ、私、朝食を温めてきますね」

早口でそう言って、ベッドから離れようとした瞬間だった。

ばさりと掛布団を捲る音がしたかと思うと、突然ベッドの方から伸びてきた彼の手に、腕を引っ張られた。

「きゃっ」

私は体勢を崩してベッドに倒れ込み、なにが起きたのかと目を白黒させている間に、彼の胸元にぎゅっと抱き寄せられてしまった。

全身が彼の温もりと香りに包まれ、心臓が早鐘を打つ。

えっ。なに? なんで私、抱きしめられてるの――!?



< 40 / 233 >

この作品をシェア

pagetop