エリート外科医といいなり婚前同居
彼の目の前で、という状況に緊張しつつ、エプロンを胸に当てる。
首の後ろと腰を細めのリボンで結ぶタイプなので、まずは手を首の後ろに回してリボンを結ぼうとしたけれど、彼に見られているせいでなかなかうまくできない。
見かねた暁さんが、私の背後に回って首のリボンに手をかけた。
うなじの下の方に微妙に触れる彼の手と、リボンが擦れる感覚に、ときどき肩がぴくりと震えてしまう。そんな私の耳元で、暁さんのハスキーボイスが優しく言った。
「大丈夫だよ、痛くしないから」
な、なんか彼が言うと変な意味に聞こえるんですけど……!
心臓が早鐘を打ち始め、全身から湯気が出そうになる。
「腰の方も結んじゃうよ」
「あ、ありがとうございます……」
リボンを結ばれている間中、背後に感じる彼の息遣いや、触れるようで触れない微妙な距離感にドキドキが止まらなかった。
背を向けているからいいけれど、絶対に顔は真っ赤だ。
もー! だから〝どちらかというと嫌い〟なんだよ、暁さん。一緒にいたら、心臓が壊れそうになるから……。
ぎゅっと目を閉じて羞恥に耐えていると、背後の彼が言った。
「……できた。こっち向いて?」