エリート外科医といいなり婚前同居
「泣くなら、俺の胸で泣いて」
暁さんの真意が読めないまま、家政婦生活で初めての週末を迎えた。
土曜日の彼は遠方で学会があると出かけていき、ほとんど家にいなかったからまだよかったものの、問題は日曜日だった。
彼は丸一日休みだと言うし、私にも特に予定がない。暁さんと二人きりで二十四時間一緒にいることになってしまう。……それは、なんとしてでも避けたい。
色々と考えた末、無難なところで実家に帰らせてもらうことにした。
「紺野先生によろしくね」
「はい。お夕飯までには帰りますので」
午前九時過ぎに出かけるとき、いつもとは逆に、暁さんが玄関まで私を見送ってくれた。その瞳はトロンとしていてまだ眠たそう。
私は見送りなんていらなかったのに、『朝起きた時にいなくなってたらなんか寂しいから、出かける前に起こして』と彼に頼まれていたのだ。
お仕事で疲れているんだから、無理しなくていいのに……。
そんなことを思いながら、マンションを出て駅に向かった。その道すがら、街の景色がクリスマスムードに一色に染まっていることに気がつく。
街灯には、赤と緑のリボン。立ち並ぶお店のショーウィンドウには、プレゼントやサンタクロース、りんごやお菓子のオーナメントが飾ってある。窓ガラスにスプレーで雪が描いてあるお店もあった。