エリート外科医といいなり婚前同居
朝が来て、目を覚ました私のもとに、当然ながら母の姿はなかった。
私は落胆したけれど、箱にリボンのかかった別のプレゼントが置いてあり、とりあえずそれを開けてみる。
『……かばん?』
小さなトランクのような、取っ手のついた硬いかばん。
なんだろうと思いつつ側面を見ると、赤い十字マークのシールが貼ってあり、当時はその名を知らなかったけれど、救急箱――お医者さんが使うものだ!と理解した。
中を開けてみると、それはそれはさまざまな道具が入っていて、目的のプレゼントとは違ったことを一瞬忘れ、私は目を輝かせる。
そんな時、父がタイミングを見計らったように子ども部屋に入ってきた。
『お父さん、これすごいの! お医者さんの道具がいっぱい!』
興奮気味に伝えると、父は優しい目をしてうんうんと頷き、こう言った。
『たぶん、天国のお母さんがサンタさんに頼んだんだな。千波がこれでうんとお医者さんの練習をして、早くお父さんの仕事を手伝えるようにって』
『お母さんが……そっか。千波、頑張って練習する!』
このプレゼントには、お母さんの思いが込められているんだ!
そう思うとうれしくなって、目の前の救急箱が最高のプレゼントに見えてくるのだった。