エリート外科医といいなり婚前同居
……暁さんって、プロのカウンセラーみたいだな。
私がわけもわからず泣いていた時には『話したくないならいい』と言っていたけれど、少し気持ちが落ち着いたこのタイミングで、私の気持ちにそっと耳を傾けてくれるんだもの。
やっぱり、お医者様だから、人の痛みには敏感なのかもしれないな。
そんなことを思いながら、私はぽつぽつと語り始める。
「……父が、再婚しそうなんですけど」
「紺野先生が、再婚……」
「再婚相手の息子さんは医学部の学生で、父はいずれ、彼に病院を継がせたいと思っているんだそうです」
「なるほど……」
暁さんは終始相槌を打つだけにとどまり、じっと私の話に耳を傾けてくれる。
彼と話しているうちになんとなく心の中が整理されて、自分が落ち込んでいた理由が、次第に心の表面に引き上げられていく感じがした。
「その上……父と再婚相手とその息子で、ずっと私に隠していたことがあったと知って、なんか、のけ者にされたような気がしたんです。三人が、意地悪で私に隠し事してたわけじゃないのは十分わかってますけど……寂しかった。特に父とは、たったふたりだけの家族だって思いが強いから、新しい家族を優先されたようで……寂しかったんです」