エリート外科医といいなり婚前同居

ようやく本音をこぼせた安堵感で、言葉尻が震えてしまった。

そう……寂しかったんだ、私。あの家から、どんどん自分の居場所がなくなるようで。

母はいないし、仕事で忙しい父にはワガママを言えなかった昔みたいに、ひとりぼっちになってしまいそうで――。

再び目に涙が溜まり、それが暁さんの手の甲にぽたりと落ちてしまった。

「ごめん、なさい……」

「ううん。よく言えたね。寂しかったって」

暁さんはそう言うと、私を胸に抱き寄せた。子どもをあやすようにポンポンと、背中を叩いてくれる。

すると、不思議と胸の痛みが和らいでいくのを感じた。
心の傷口を、彼に手当てしてもらったみたい……。

「どうして……」

私はふと顔を上げ、暁さんを見上げた。今なら、ずっと聞きたかったことを聞けそうな気がする。そう思ったからだ。

目が合った彼は「ん?」とかすかに首を傾げる。

「どうしてそんなに優しくするんですか? ……私のこと弄んでやろうって思ってるんですか?」

私の言葉に暁さんは驚いて目を見開き、すぐに否定した。

「まさか、弄んでやろうなんて思うわけない。千波さんは、俺の大事な……」



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