エリート外科医といいなり婚前同居
思わせぶりな言葉とともにまっすぐに見つめられ、ドキンと胸が高鳴る。
大事な……その先は、なんですか?
私はごくりと喉を鳴らし、無意識に甘い予感を抱いてしまったけれど。
「大事な……家政婦さん、だから」
暁さんは私から少し視線を外し、わかりきっている事実を告げた。私の胸に膨らんでいたものが、一気にしぼんでいく。
……家政婦さん。そうだよね。私と彼の関係は、それ以外にない。
私はいったい、何を期待していたんだろう。……期待? なんで、暁さんに期待なんか。
落胆したかと思えば自問自答したり、心の中が忙しくてぼうっとしていたら、暁さんが突然こんなことを言った。
「実は、その大事な家政婦さんにお願いがあるんだけど」
「……お願い?」
我に返って首を傾げると、彼にぎゅっと両手を握られ、衝撃的なことを告げられた。
「仕事のオプションとして、婚約者のフリをしてくれないか?」
「えっ?」
こ、婚約者……? 暁さんの?
予想外のお願い過ぎて、ぽかんと口を開けて固まる。
「実は昨日の学会で、今の病院を紹介してくれた知り合いの医師に会ったんだけど、その先生の娘との結婚を勧められてね。とっさに婚約者がいると嘘をついたら、ぜひ会わせてくれって言われて困ってるんだ」
「きゅ、急にそんなこと言われても……」